技術とニーズと偏った意見についての考察

HD DVD事業終息、東芝が宣言

この記事(および発表直前の複数の記事)で納得いかないことがある。
正直、BDにしろHD DVDにしろ、今のDVD用途から見て必要なものだとは思っていない。
※エンコード技術の方の問題で、高画質高圧縮低ライセンス料金な圧縮アルゴリズムとチューナー機能があれば良い。

そもそもメディア劣化による情報損失は光ディスクで避けて通れないものだ。個人ユースの記録メディアとしてはどんなにツールでも良いというのが個人的な感想。

だからと言って「真の勝者はHDDだ」とかいわれちゃうと「おいおい、勘違いもいいかげんにしなさい」と思ってしまう。

高品質高性能新規格戦争の話題として、一般にはVHSとベータで比較している。でも忘れて欲しくないのは、いまでもビデオのマスターにはベータが使われている事で、一般消費者には「低価格・大容量・可搬性」という方が大切だっただけである(つまり、3倍録画モードが勝利の鍵ということで、別にコンテンツホルダーがどうこうという話ではない)。

でも、CDの後継企画の時の議論で、ユーザーがMP3を選択したのは、実は容量の問題とは全く関係ないという事実をご存じだろうか?
もともと民間人が普通の生活環境でジュークボックス風に気軽に「メディアチェンジせずに」「大量の音楽を」「自分の好きな順番に」かけられるのが魅力だった所に、メモリカードの低価格化が加わり、再生専用に作り込んだ時に小型で携帯性が良い物が作れたという所にある。
つまり「騒音の中で音割れしても良い、ロック・ヒップポップの類が携帯に便利だから選択した」のである。

じゃあ動画はどうか? 確かに最近のハードディスクは低価格が進んでいるけれど、持ち運びにはまだまだ不便だ(衝撃には弱いし熱にも弱いし重いし大きい)。だいたい大量のアーカイブを構成するには電気容量がとんでもなく必要となる。
シリコンメモリはどうかというと、はっきり言うが書き込み回数に限界があり、やはり熱と湿気に弱い。弱いどころかVTRに比べてどちらも壊れやすい。

確かにコンテンツとしてはネット配信というものが主流になるだろう。
でもそれは、昔のような「アーカイヴ系」利用者より「ちょい見ポイ捨て」系の人がそうなるだけの話であって、子供の成長の記録や旅行の記録、そしてスポーツのアーカイヴにおいてはまだまだ「大容量安定型」のディスクは残ると思っている。

見ているといいだろう。おそらく大見得を切ったデジタル配信信者は、5年後に自分の発言を見て赤面するから。
光ディスクは残る。それも高い確度でね。
デジタル配信は、彼らの思うほど上手くいかない。
長いものをかぶりつきで見るには、フラッシュ系の画質では耐えられないから。

同じような愚論に「Windows MobileとiPhonを比較して前者をくそみそにいう」というもの。そりゃそうだ、iPhoneはそれようにカスタマイズされた、ハックされることを前提としない、ソフトウェアモデルではない製品(つまりハードウェアとそれに併せて開発された汎用性を欠いたソフトで構成されたもの)なのだから。
使い勝手が良いというより「そういう使い方しかしないように」という前提の製品なのだ。
ところがWindows Mobileは違う。こちらはプラットホームなのだ。その上に何をのせるかは使う人の自由なのである。
※だから、逆にマイクロソフトはもっともっと標準機能を削り落としまくるべきなんだけどね。

このへんにおいて、デジタルアナリストの大半の言うことを久保田は嘲笑しているのである。
おそらくPCというツールは今後も長生きするし、ケータイはあくまでコミュニケーションツールに過ぎない。ネットは通信手段として日常に溶け込むが、社会インフラとして絶対必須にはならない。というより絶対なれない(視力の衰えた老人にネットは酷である)。
デジタルアナリスト達が何を言おうと、絶対的なものは「対面活動」と「紙による記録」なのだ。
少なくとも、あと30年は続くね。

でなければ、電子書籍はもっと競争による改良を受け、著作権保護を含めた一大産業になっていてもおかしくないのに、そうじゃないからね。
※電子書籍・ダウンロード書籍・ケータイ小説のいずれも、あくまで傍流。文書は最後に紙で読むというのは、たぶん変わらないだろう。

忘れてました。スーパーボウル雑感

その後仕事でどえらい地雷を踏み抜きましたり、組合活動でクーデター同然のパージくらいかけたりしてむすっとしていので(いえ、後者は単に若手の勇み足なんですけど)書くの忘れてました。

今回のスーパーボウル、というよりNFLプレーオフは、プレーオフで怪我した方が負け、という至極当たり前なプロセスを通しただけでした。
無論、ペイトリオッツのパーフェクトシーズンの期待、というものあったのでしょうが、試合を見ていてシーズン11週目以降はひたすらにスケジュールに恵まれた事(何せ勝ち越しチームがスティーラーズとジャイアンツ。あとは皆大きく負け越している)、プレーオフでは相手が常にエースを負傷で失っていた事、など幸運続きだっただけで、ずーっと綱渡りしていたのである。

それに対してジャイアンツは、もともと守備が安定してきた所に突然のエリちん(イーライの事。彼のスペルがELI、ローマ字読みしたら「えぃ」ですが、日本人はこういう音を「えり」と発音してしまいます)覚醒によってアレよアレよという間に(おまけにダラスもグリーンベイも攻撃が守備の圧力に根負けして自滅した訳で)勝ち上がった訳です。

そもそも今期のペイトリオッツは、ランデイ・モスのお陰で実力以上の攻撃力を出していた(これがチャド・ジョンソンだったらこうはいかなかった。T.Oならこれくらいの成績は残した)という所があり、個人的にブレイディが局面を打開できる能力に長けているとは思っていないので-つまり今年はモスにマークか集中したからミドルゾーンやショートレンジが開くのだ。パスラッシュが強くなった時に兄マニングよりも劣ると思っている-怪我した時点でやばかった筈。
さらに中盤からジャイアンツ守備が強烈なフロントラインを活かした攻撃的な守備を展開すると、話にならなかった。
ところが、逆転した直後に少しだけ守りに入ったジャイアンツの隙を突いて、かつペイトリオッツの基本的に持ち合わせた力を存分に発揮して、逆転した訳で、ここは素直に力通りであるといえる。

ただ、そこから先がエリちん大爆発だった、と思っている。
あのラストドライブは、はっきり言って「勝ちたいという意欲」が生み出した実力以上の力だと思う。
でも、それは「奇跡」ではない。火事場のクソ力なのである。
往々にしてそういう所をスーパーボウルは見せてしまう。
その後伸び悩むQBが多数いるように、エリちんは「やっちゃった」のかも知れない。
少なくともエリちんが局面を打開した訳ではない。誰か個人の力ではなかった。
不甲斐ない攻撃陣を支えてくれた接戦に持ち込んだ、守備陣がいたから、彼らの努力に応えたかったから、全員が集中したんだと思うのである。

まあ、シナリオを平気で書いては火事場のクソ力がブチ壊す最近のNFLの展開として、KYジャイアンツとGB戦後に揶揄された(ファーブが花道を飾ってペイトリオッツのパーフェクト阻止、という筋書きをブチ壊した)のに、見事に花道で大見得を切って喝采を浴びたエリちんと、それを見事に支えたストレイハンやユメイオラといった守備フロントに、実に見事であったと拍手を送るべきなのでしょう。
でも、怪我さえなければチャージャーズが勝っていたと思うしねえ。