派遣切りの報道のあり方と、支援のあり方と

希望ミスマッチ…派遣切り救済雇用 応募サッパリというのは、産経新聞配信の記事。

--以下、本文。著作権は産経新聞--

 全国の製造業で相次ぐ非正規社員の「派遣切り」。雇用対策として、さいたま市が発表した臨時職員100人の採用計画の応募が8人にとどまったことが明らかになったが、新規雇用を打ち出したほかの企業や自治体でも元派遣社員の応募が少数にすぎない実態が分かってきた。「派遣切り救済」と「人手不足解消」の一石二鳥を狙った企業や自治体は肩すかしを食った格好となっている。
 高齢者介護施設を全国で展開するさいたま市の介護会社「メデカジャパン」。日産や日本IBMなど派遣社員削減を発表した30社に人員募集の文書を送ったが、「応募は1件しかありません」(担当者)。
 「派遣削減が報道されたあらゆる企業に送っているが、職種や場所がなかなか合わないようで」と担当者は戸惑いを隠さない。
 ラーメンチェーンの「幸楽苑」(福島県郡山市)では派遣切りが相次ぐ現状に先月、例年の3倍の150人の中途採用を発表。ところが面接にきたのは20~30人。派遣切りにあったとみられる人はうち2、3割。担当者は「このご時世なので、社会の役に立ちたいと採用数を増やしたが、拍子抜けしました」。
 厚生労働省は企業への聞き取り調査から派遣切りで3月までに8万5000人が失業すると試算。このような中、慢性的な人手不足を解消しようと新規雇用を打ち出す企業も多い。
 タクシー会社「エムケイ」(京都市)は先月、運転手1万人の新規募集を発表。1週間で140人が説明会に訪れたが、「元派遣社員の方はチラホラという程度。もっと応募があると思っていたが…」(担当者)。
 当惑しているのは、自治体なども同じ。新潟県上越市は派遣切りなどにあった市内在住者を対象に小中学校の安全管理を行う臨時職員80人を募集。「定員がいっぱいになった場合、追加募集するか検討しようとした」が、申し込みは22人にとどまっている。
 大分キヤノンなどで合わせて数千人の派遣切りが見込まれる大分県。「JAおおいた」(大分市)では、人手不足にあえぐ農業の現場で働く求人を呼びかけたが、問い合わせがあった約50人のうち元派遣社員は数人だけだった。
 「日本養豚生産者協議会」(東京)も100人の求人を発表し、57人から応募があった。しかし、こちらも「元派遣社員は2割に満たず、逆に『会社に勤めているが転職したい』という問い合わせがあった」という。
 こうした原因は、元派遣社員が希望する職場と、人手が足りず求人している職場があわない「ミスマッチ」によるもの。厚労省職業安定局は「どうやってこうした問題を解消するかは検討していきたい」としている。

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これについてCNet Japanのブログで、今年初めから指摘されていた方がいて、目から鱗が落ちた。
なにわのITベンチャー社長Blog より クビを切れない正社員と派遣切り 失業は「自己責任」ではない!? の二つのエントリです。

結論的に言うと、「本当に、生きるか死ぬから瀬戸際で、本気で「生きる」事に賭けて職探しをする」上に置いて、まだまだ雇用機会は沢山あるという事実が存在しているのに、「雇用のミスマッチ」などという甘えを許しているうちは、解雇された派遣労働者は自己責任の範囲で自滅している、という指摘だと読んだ訳ですよ、私は。
特に、「つまり、期間工(ハケン)に応募する人は多いけれど、途中でケツを捲くる奴も非常にたくさんいるわけです。」という言葉の上において(ついでに言うと、労働現場では契約社員が大量に短期離職するという事実の前では)、派遣社員の質については検討の余地があると思うのです。

定職に就く、という事は、ある面において「自分の我が儘を抑える」事が求められます。生きるために妥協するか、それとも餓死するか、という究極の選択を突きつけられています。
単に「安定企業で安定した仕事をして、ゆくゆくはそこの社員に」なんつう事は、そもそもあり得ない夢物語で(出来ない訳ではないが、そこには人にゴマスリしておべっかして取り入って、という日本的ムラ社会の世渡り術の高度な技能が求められる)、そこにすがっただけの人には未来なんてない。
そりゃ、会社が倒産してそこしか行き場がない、という場合もある。でも、その地位に甘んじる事なく次のステップをきちんと描いていれば、給与水準はともかく中途採用の道は、ない訳ではないと思う。

派遣村の活動を見ていると、「派遣切り、家を追い出されてかわいそう」からスタートするも、その質を問わずに「お上が悪い」に遷移して「国家が雇用を保障せい」と言う暴論に移行してしまっている。
※暴論と言うのは「じゃ自衛隊に雇い入れる」とか「じゃあ開拓農民として集団移住させるが、逃亡不能だぜ」と言われても反論できない意見だから。それを断ったら、自分が見込みのない生存競争に参加したと言う事になるので、支援する義理は無くなるんじゃないですか?

そもそも、派遣切りの本来の問題点は「派遣元が、登録社員の雇用保障をしていない」という不誠実な労働契約状態な筈であって契約先企業が非難されるものではない筈(我が社の社長はそこを冷静に言い切った。やっぱり偉いわ)。
かつ、そもそも「カットされるのは当然」という前提の契約なのだという事を忘れて議論しているのは、おかしいのではないかと。

正直、支援する人も「じゃああんたも寝言言ってないで、生きるか死ぬかの二択なんだから、半年は介護で頑張って貯金貯めて、それから就活すれば」とか、そういう厳しい態度も必要なんじゃないのかなあ。
そういう点で、自治体の臨時職員公募は、的外れですね。

無論、支援は必要ですけど、自分たちが追い込まれた状態にある事を自覚させるのも支援だと思いますがね。

真に生きていく為の努力をする人を、支援して行けばきっとどこかで日本経済は立ち直るきっかけを得ると思います。